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鯵フライと涙

今日は、いただきもののタルタルソースがあったので、 鯵フライを揚げて、夕食にした。 衣はさくっと、身はふっくら。 タルタルソースの酸味とコクが絶妙で、 思わず「おいしいね」と声が出た。

そんな食卓の余韻の中で、 私は今日の帰り道のことを思い出していた。

業務を引き継いでくれた先輩が、 今日で最後の出社だった。 優しくて、的確で、 私にたくさんのことを教えてくれた人。

「たいへんなおしごとをおまかせしてごめんなさい」

そう言ってくれたその声が、 帰り道、ふと胸に響いて、 気づけば涙がこぼれていた。

別れは、いつも突然やってくる。 でも、残してくれたものは、 静かに、確かに、私の中に根を張っている。

ふと思い出したのは、前職での広報の仕事。 あの頃は、会社の魅力をどう伝えるか、 世の中にどう知ってもらうか、 「攻め」の視点で日々を駆け抜けていた。

でも同時に、 「この表現は誤解を生まないか」

「この状態が続くと、会社が訴えられるかもしれない」 そんな「守り」の視点も、常に持っていた。

広報という仕事は、 華やかに見えて、実はとても繊細で、 攻めと守りの両方を行き来する、 まるで綱渡りのような日々だった。

その経験が、今の私の仕事にも生きている。 資料をチェックするとき、 ただ誤字を直すだけじゃなく、 その先にあるリスクや意図を読み取ろうとする。 それは、あの頃に鍛えられた感覚だと思う。

そして、そんな私に、

「これくらいなら大丈夫、直しすぎないでくださいね」とやさしく伝えてくれた先輩。 その言葉の奥にあったのは、 きっと、相手への敬意と信頼だった。

今日は、いろんなことを思い出した。 別れのさみしさも、 過去の自分の未熟さも、 そして、今の自分が少しずつ変わってきたことも。

そんな一日を、 鯵フライとタルタルソースが、 やさしく包んでくれた。

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