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白菜の甘さに、心ほどける夜。

今日は、近所の野菜直売所で買ってきた白菜が、 とびきりおいしかった。

キノコ、豚肉、豆腐、そしてこれまた直売所で手に入れた立派なねぎ。 昆布でだしをとって、ささやかな鍋に仕立てた。 白菜はやわらかくて、甘くて、 色もほんのりオレンジがかっていて、見た目にも美しい。

新鮮だから? それとも、品種や土壌の力? 理由はわからないけれど、 ひと口ごとに、体の奥がほどけていくような味だった。

主人が鍋の支度をしてくれている間に、 私は大根を切って、豚肉とショウガ、片栗粉と調味料で あんかけ大根を作った。

食後には、大根の葉をごま油で炒めて、油揚げと調味料を加えて、 明日の晩ごはん用のお惣菜をひと品。

若いころは、六本木や青山でディナーを食べることが、 豊かさの証だと思っていた。 でも今は、作り手の顔が見える野菜を、 自分の手で切って、味を重ねて、 家でゆっくり味わう時間こそが、 何よりの贅沢だと思う。

どうして変わったんだろう。 年を重ねたから? それとも、日々の中で、 本当に大切なものが見えてきたから?

理由はわからないけれど、 今夜の白菜の甘さが、 その答えをそっと教えてくれた気がする。

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