
ある朝、森の郵便屋さんのネズミくんは、小さな手紙を届けに出かけました。 手紙には、たったひとことだけ。「ありがとう」
ネズミくんは考えました。 「この言葉を、どうやって運ぼう?」
風が強い日も、雨が降る日も、ネズミくんは手紙を濡らさないように、そっと葉っぱで包みました。
それは、ただの配達じゃなくて、気持ちを運ぶおしごと。
しごとって、だれかの心にそっと触れることなのかもしれません。
ネズミくんの「ありがとう」を運ぶ旅
1. フクロウ先生と「ことばの重さ」
森のはずれで、ネズミくんはフクロウ先生に出会いました。 「たったひとことの手紙なんです。『ありがとう』って。」 するとフクロウ先生は、ゆっくりとまぶたを閉じて言いました。 「ことばは、短いほど重くなることがあるんじゃよ。だからこそ、ていねいに運ぶんじゃ。」
ネズミくんは、手紙をもっと大切に包み直しました。
2.カメさんと「待つことのやさしさ」
川辺で、ネズミくんはカメさんに出会いました。 「急いでるんです。早く届けなきゃ。」 カメさんはにっこり笑って言いました。 「急ぐことも大事だけど、待つことも思いやりだよ。相手のタイミングを大事にするってことさ。」
ネズミくんは、手紙を届ける時間も、相手の気持ちに合わせようと決めました。
3.モモンガちゃんと「気づく力」
木の上で、モモンガちゃんがネズミくんに声をかけました。 「ねえ、その手紙、誰に届けるの?」 「まだ知らないんだ。ただ、森の誰かが『ありがとう』を待ってる気がして…」 モモンガちゃんはくるりと宙返りして言いました。 「それってすごいよ。気づこうとする気持ちが、もう思いやりだもん。」
ネズミくんの胸の中が、ぽっとあたたかくなりました。
こうしてネズミくんは、言葉の重さ、待つやさしさ、気づく力を学びながら、「ありがとう」を運び続けました。
あなたなら、どんな気持ちを届けたい?
きっとその気持ちも、誰かの心にそっと灯りをともすはずです。














