
もん太は自分のことは自分で決めていた。
でももん太が決められなかったことが3つある。
一つは生後半年での去勢手術。二つ目が家の引越し。三つ目が私たちの年に一度足らずの旅行。
思えば去勢手術まで本当に無邪気に遊んでいたもん太。私のすその長いスカートの裾にじゃれてよく遊んでいた。朝ゲージから出るのが楽しみで楽しみで仕方なかったもん太。
そんな中一緒に暮らしていくためにやむなく行った去勢手術。当日は病院に一泊させて翌日連れて帰りに病院に行った。すると、
「ご主人様がゲージから出してください。ものすごく怒っていて出ません」と看護スタッフ。
行ってみると確かにものすごく怒っていて、何とか無理に引きずり出した。
今でもその時のことを想うと胸が痛い。彼は二つ怒っていたのだ。勝手に子供を作れなくされたことを。そして、無理やり一人病院に置き去りにされたことを。
その後ワクチンを打ってもらいに年に一度病院に通ったが病院に着くと怒って手が付けられない。完全に去勢手術が彼のトラウマになっていた。何年間かのワクチン通いを経て、ある時副作用が出てワクチンは辞めてしまった。以降、病院は最後に本当に調子が悪くなってからしかお世話にならなかった(それでも、一階だけ検査をやってもらって、あとは本人を連れて行かずに私一人で先生に相談を重ねて薬を処方してもらっていた)。
信じていたのに裏切られた!と思ったんだろうな。私自身ももん太の子供が一匹でもいたらどんなに良かったかと今思う。どうしたらよかったのか正解は今も分からない。
引越しは先日書いた通りで、安住の地を追われた彼はしばらくの間新しい家になじめなかった。結局新しい家には3年位暮らしたのだが、ここなら安心してゆっくりできるというライナスの毛布みたいな場所は結局見つからなかったような気がする。猫は家につくという言葉があるがその通りな気がする。あのまま引っ越さなかったらストレスのない生活でもう少し長生きできたんじゃないか、と後悔は尽きない。
三つ目の旅行。そんなに年に何度も行くような家庭ではないが、たまに旅行に行った。その際はお決まりのペットホテルにお願いしていた。一日に何度かゲージから出して遊んでくれるというので安心して何年間かお世話になった。
もん太もお姉さんに慣れていて安心して預けていた。
が、引き取りに行くと必ず彼は怒る。やはり病院のトラウマで置き去りにされたと感じていたと思う。夫婦二人で外出から家に帰るのが少し遅くなったりしても、何してたんだと言わんばかりににゃあにゃあいいながらお迎えに出てくる。
甘え下手でクールな彼だが、実はものすごい寂しがり屋。
今日家に帰るときに主人に
これから帰るけど、何か欲しいモノある?と何の気なしにLINEを送った。
送ってみて自問自答した。
ある。もん太だよ。